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魂は孤独

オーガニックで有機的なものが一つであるわきゃないのに!

2016年冬アニメ総括① このすば・紅殻のパンドラ

はじめに

2016年冬アニメが終わり、春アニメが始まっている。

ちょっと世間から出遅れることになるが、見ていた冬アニメの感想を何回か分けて書いていこうと思う。

 

個人的に冬アニメは、ギャグ枠としてはこのすばこと「この素晴らしい世界に祝福を!」がダントツで面白く、次点に「紅殻のパンドラ」。

シリアス枠では「昭和元禄落語心中」、次点に「僕だけがいない街」が面白かった。

他にも面白い作品はいくつかあったが、目立って良かったのはこの4作である。

簡単な図にすると、

 

「このすば」「落語心中」>「パンドラ」「街」>その他

 

という感じ。

 

そして、今回はタイトルにもある通りギャグ枠である「このすば」、「パンドラ」について書いていこうと思う。

 

「この素晴らしい世界に祝福を!」

タイトルのダサさ、キャラデザの可愛く無さ、あらすじのテンプレラノベ原作クソアニメ臭(いわゆる石鹸枠)と、1話を見なくても切りたいオーラしかなかった。

しかし、1話の「異世界へ転生する時のカズマとアクアの性格の悪いやり取り」と「冒険に出ようとせず、筋骨隆々の男たちと土木作業に従事する二人」を見て、衝撃を受ける。

1話から「これは凄いアニメが始まったぞ」というワクワクがあり、毎回その期待を上回るものを提供してくれる素晴らしいアニメだった。

ツイッターのTLやその他インターネッツでの評判を見る限り、原作ファン以外は大体自分と同じような流れでハマった人が多く、また、TL上での評価は間違いなく一番高かった。

ダークホース」と呼ぶに相応しいアニメだっただろう。

残念だったのは他のアニメより1、2話短かったこととダクネスの性癖ぐらいだった。

最終回では無事に2期も発表され、今後の展開も期待したい。

このすばとアニメーションとキャプ

このすばはキャラデザが全く可愛くなかった。

原作の本の表紙などを見るととても可愛らしく、単にアニメのデザインが酷いことが分かる。

ただ、どうして可愛くないかは本編を見ればすぐに理解できる。

今作では、「顔、表情は崩れるもの」だからである。

 

これは俺の勝手な憶測だが、今作は大分インターネットにキャプを上げられることを前提に作られていると思う。

今のアニメはとにかくキャプられてネット上に上げられることを常としている。

「(アニメのタイトル) ○話 実況」で検索して出てきたまとめを見れば、キャプだけでそのアニメを見返せるといっても過言ではない。

キャプを撮られすぎて、中割り*1も「作画崩壊wwww」と言われて晒されてしまう。

こういった影響もあるのか、昨今のアニメはクオリティ偏重の傾向にあると思う。

 

普通のクオリティの高いアニメが「徹底的に崩さない」ということをやっている中、

このすばは「あえて崩して面白いキャプを撮らせる」ということをやっていた。(繰り返すようだが、俺の勝手な憶測である)

実際、有名ブロガーが言葉を尽くすよりも、とにかく評判が良いことを伝えるまとめブログよりも、以下の画像を見た方が明らかに面白そうだし、見ていなかった人も途中から入って来そうな気がする。

 

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というようにこうやってアクアの面白かった顔を集めるだけでも今作の面白さが伝わってくる。

キャプだけだとさすがに分からないが、色んなキャラの表情がコロコロと変わり、それだけでも楽しい気持ちになれた。

 

顔だけにとどまらず、動きも大胆で面白かった。

昨今の 「クオリティや作画が良い」という言葉だけでは説明がつかない、アニメーション本来の「絵が動く楽しさ」を存分に伝えてくれる映像だった。

今時のアニメと比べると手抜きに見えるけども、それなのに、いや、だからこそ面白いのだと思う。

テンポも良く、純粋に面白いギャグアニメとしても非常に出来が良く、毎週ゲラゲラ笑うことができた。

このすばの持つテーマ

このすばのあらすじは、上述の通り、どう見ても、テンプレラノベ原作クソアニメにしか見えなかったし、最後まで見た今、改めてあらすじを書こうとしても、それで面白さを伝えるのは難しい。

このすばのあらすじを全く知らない人は、よくある「現代で主人公が死んで、異世界へ転生して女の子達とパーティを組んで、異世界で冒険をする話」(実際は冒険もしないのだが)という認識で良い。

これだけだと本当につまらなそうだ。

 

では、このすばの何が面白かったかという話になる。

これは明らかにそういったテンプレを笑いに転換していたからだろう。

よくある「現代で主人公が死んで、異世界へ転生して女の子達とパーティを組んで、異世界で冒険をする話がやりそうなことをやらない」、ということを行っていた。

他のラノベやそれを原作にしたアニメに対する、痛烈な皮肉、風刺と言っても良いかもしれない。

少々強すぎる言葉を使ってしまったが、最近の流行やテンプレが無ければ決して成立しない作品であったには違いない。

それでいて、ちゃんと笑いにしているから嫌味もなく、素直に楽しめる。

 

「主人公のカズマと同様に現代から転生してきて、強い魔法の剣を持ち、可愛い女の子達にモテながらカッコ良くモンスターを倒して冒険している」という、本来主人公であるべきキャラ(ミツルギ)が出てきた回があった。

これをしょっぱいステータスのカズマが悪知恵でハメてボコボコにするという内容だった。

この回を見た時「まさにこれがこの作品でやりたかったことなんだろうな~」としみじみ感じた。

 

また、自分のTLに「冒険者カードに載らない能力で頑張る主人公と、能力値だけは高いのにぽんこつな仲間達、というのも、履歴書や学歴が物を言うこの社会への風刺にも読める」ということを言っている人(鍵なので引用できない)もいて、なるほどとも思ったりした。

 

まあ、そもそもはギャグ作品なので、素直に見て、笑って、おしまいで良いのだが。

小賢しいオタクがこうして小賢しい考察をすることができるくらいには世間の風潮にマッチしていたし、見た目以上に骨格やテーマがかなりしっかりしている作品だったとは思う。

 

 

この素晴らしい世界に祝福を!     あぁ、駄女神さま (角川スニーカー文庫)

この素晴らしい世界に祝福を! あぁ、駄女神さま (角川スニーカー文庫)

 

 

 

「紅殻のパンドラ」

さて、「このすば」と丁度良い感じに対比できそうなアニメが「紅殻のパンドラ」である。

「このすば」が「崩して動かす」ことを追求していたとしたら、今作は「徹底的に動かさない」アニメだった。

 パンドラのかんたん作画

「紅殻のパンドラ」は、身も蓋もない言い方をすると、主人公の七転福音(ななころびねね)とクラリオン(通称クラりん)という二人の女の子が活躍する(イチャイチャもする)アニメだ。

この二人の主人公、特にクラりんが常にデフォルメにされていた。しかも段階がいくつかある。

 

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これが公式サイトにあるキャラ紹介。

 

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これがかんたんクラりんACT1。ACT1は滅多にない。ここまで書かれているのは稀である。

 

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 これが作中良く出てくるかんたんクラりんACT2。

色すら塗られておらず、小学生でももう少しまともに描けそう。これが作中もっとも多用されていた。

しかし、これより酷い状態がある。

 

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これがかんたんクラリンACT3。ちよちゃんのお父さんかな?

ACT2よりは若干出番が少なかった。

 

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そして極め付けはこれ。福音までかんたんである。

 

さすがに、福音がかんたんになる時は少なかったのだが、クラりんに関しては色がついているカットの方が少ない回も多々あった。(私の印象なので、正確に測ればそんなこともないのかもしれないが)

 

また、かんたんとまでは言わないが

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このような緩い絵もかなり多い。

オーバーな表現ではなく、全12話の半分以上が大体こんな調子だった。

 

こういったかんたん作画が多用され、画面に動きがないカットもかなりあった。

(これらの絵で激しく動かれても困るが)

 

特に何話だったか忘れたが、本当にかんたん作画ばかりで、画面に動きのあるシーンの方が少なくて度肝を抜かれたことがあった。

ひょっとして、「原画2,3人では?」と思ってクレジットを注視したら、普通のアニメと比べても遜色ない人数がおり、首をかしげた。

 

今作の凄い所はそれで面白いということである。

もうかれこれ15年ぐらいアニオタをやっているが、ここまで動かなくて面白いアニメは記憶にない。

クオリティ重視な昨今で時代を逆行した出来だし、映像作品を作る上での原則をいくつも破っているようにも見えた。

それでも、面白いのだから、本当に凄い。

 

最終回まで見た後、原作を2巻まで読んだのだが、これらのかんたん作画はおおよそ原作準拠であり、スタッフが手を抜いたとか、そういうことではない。

 「原作の良さを生かしつつ、アニメとして楽しいテンポを刻むことに注力することができていた」からこそ、このアニメ化は面白かったのかなと感じた。

 

また、こういった絵を徹底して見せることで今作特有の雰囲気を保っていたように思う。

画面に動きが無いシーンやかんたんであっても、絵の可愛さで視覚的に楽しかった。

この可愛さは萌えとか性的な可愛さではなく、マスコット的な可愛さだ。

ぬいぐるみに囲まれて寝るような癒し空間が今作にはあった。

 

けなしながら誉める変な文を書いてしまったが、決して不動作画一辺倒という訳でもない。

今作はアクションシーンあり、電脳世界の面白い演出ありと、もちろんそれ以外の見どころもあった。

むしろこれらのシーンとの緩急が良くできていた面もあり、「手の込んだ手抜き」を徹底して行っていたことが良い結果になったのだと思う。

パンドラの話運びの妙

「紅殻のパンドラ」の原作は原案:士郎正宗*2、漫画:六道神士という、30歳ぐらいかもう少し上の世代の漫画オタクなら悶死するような凄いタッグで描かれている。

いかにも士郎正宗らしい世界観と、六道神士の群像劇的なコメディ、笑いを取りながらもシリアスな伏線を張っていく独特な話運びが絶妙にマッチしていた。

「このすば」がパロディギャグとして「異世界に転生する作品がやるべきことをやらない」ということを骨格にしていたのに対し、今作は「士郎正宗の世界観という強固な骨格があるんだから、そこで何をやっても崩れることが無い」というちょっと反則気味に見えることをやっていた。

 

ただ、誤解してはいけないのは、あの「エクセル・サーガ*3六道神士だからここまで面白いということだろう。

普通の人間がやったら、いくら士郎正宗の世界観だろうと崩れてしまう。

それを崩さず、下らないギャグや福音とクラりんがイチャイチャしているシーンが続いていも、絶えず一定の緊張感があるのは、さすがとしか言いようがない。

逆にシリアスなシーンも、絶対にシリアス一辺倒にはならず、常に笑いが入るのも素晴らしかった。

アイドルレポーターの存在や最終回のブエルのお宝画像流出など、シリアスに傾きそうなところでギャグを入れてこれるセンスには脱帽である。

今作のストーリーについては、ただただ「六道神士すげえ!」としか言いようがないし、それをきちんとアニメにしたスタッフの手腕も素晴らしかった。

 

 

 

まとめ

16年冬アニメは、作画がぐちゃぐちゃなまま動き回る「このすば」と”かんたん”で動かない「パンドラ」という、二つの面白いギャグアニメがあって本当に有り難かった。

「監獄学園」と「下セカ」が同時期に放送していた時、「もうこんなアニメが並ぶクールなんてあと何年来ないだろう」と悲嘆にくれたのだが、意外と早くやってきて驚いている。

 

デ・ジ・キャラット」、「ギャラクシーエンジェル」でアニメオタクになった身としては、女の子がワイワイしている楽しいギャグアニメというだけで遺伝子が喜ぶ感じがする。

4コマ原作などの日常系では満足できないボディなので、これぐらいが個人的には丁度良い。

なので、いないとは思うが、この文を読んでいるアニメ業界の偉い方がいらっしゃったら、女の子がワイワイしている面白いギャグアニメを毎クール必ず作って頂きたい。

どうか、よろしくお願い致します。

 

*1:原画と原画を繋ぐ絵のこと、動くように見せるための絵なので、一枚絵としてはクオリティが低く素人目では下手な絵に見えることもある。詳細はニコ百でも読むと良いだろう。(特に作画崩壊の項)

中割りとは (ナカワリとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

*2:このブログは敬称略、以下実在する人物も同じ

*3:全27巻。F県F市の市街征服を目論む秘密結社アクロスとその陰謀を阻止する市役所との戦いの物語。延々シリアスそうな伏線を張りながら、ずーっとギャグ漫画をやっていた。詳細はウィキペディアでも エクセル・サーガ - Wikipedia